お通夜や葬儀・告別式の前には、納棺(のうかん)と言って、故人様を棺に納めるための儀式を行います。この納棺は、故人様がこの世からあの世へ旅立つための支度を整える儀式で、よく耳にする死化粧や死装束(しにしょうぞく)も、その一環として行われるものです。
今回は、納棺ではどのようなことが行われるのか、流れや費用を紹介します。立会い時の服装や注意すべきポイントなどのマナーもお伝えしますので、ぜひ、参考にしてください。
目次
納棺とは
納棺(のうかん)とは、故人様を棺に納める儀式です。かつては親族で行っていましたが、近年は、葬儀社のスタッフや納棺師によって行われることがほとんどです。どのような意味合いがあり、具体的にどのようなことを行うのかは、宗旨宗派によっても異なりますが、仏教においては、故人様が安らかにあの世へ旅立てるように、お身体を清め、死化粧や死装束を整え、生前愛用していた副葬品とともに棺に納める儀式のことを言います。
基本的に、納棺の儀式に参列できる方は、家族や親族などの近親者に限られています。また、納棺は、故人様のお身体を清めるためだけでなく、遺されたご遺族が、故人様のお身体に直接触れてお別れができる大切な時間でもあります。
納棺と湯灌の違い
同じくお通夜の前に行う儀式に「湯灌(ゆかん)」があります。湯灌は、故人様をお風呂に入れて洗い清める儀式で、納棺の儀式の一環として行われます。
ただし、湯灌は必ず行われるものではないため、最近は、湯灌を省略し、アルコールを含ませたガーゼなどで身体を拭く「清拭(せいしき)」で代用するケースも増えています。
納棺はいつ、どのくらいの時間をかけて行うの?
納棺は、状況によっても異なりますが、一般的に、お通夜の3~4時間前に行われることが多くなっています。また納棺にかかる時間は、30分〜2時間程度となっており、ご遺体の状況や、湯灌を行うかなど、お身体を清める方法によっても変わってきます。基本的には、お通夜に間に合うように余裕を持ったスケジュールで行います。
ご逝去から納棺、火葬までの流れ
ご逝去されてから納棺までは、「ご逝去→エンゼルケア→死亡診断書発行→葬儀社に依頼→
搬送・安置→葬儀社との打ち合わせ→納棺」という流れで進みます。
ちなみに納棺後は、「お通夜→葬儀・告別式→火葬」と、儀式が続きます。
納棺の費用
納棺では、湯灌が5〜15万円、死装束が数千円〜数万円といった費用が必要になります。また死化粧についても追加料金が発生します。希望している場合は、これらの料金がセットプランに含まれているか、葬儀社にまず確認しましょう。含まれていないようなら、追加料金を支払う必要があります。
納棺の流れ
次に、納棺ではどのようなことを、どんな流れで行うのかをみていきましょう。納棺は次のような流れで進みます。
1. 末期の水(まつごのみず)
末期の水は、あの世で故人様が渇きに苦しまないようにという想いを込めて、故人様の口元を水で湿らせる儀式です。
割り箸の先に白い糸で脱脂綿を縛り付けたものを用意し、水を汲んだお椀に浸し、湿らせた脱脂綿を、故人様の上唇と下唇の順に、左から右へ優しくなぞるようにして湿らせます。立ち会ったご家族らが、血縁の近い順に順番に行うことが一般的です。
2. 清拭(せいしき)を行う
アルコールを浸したガーゼなどで、故人様のお身体を拭き清める儀式です。
ほかに、故人様の体を洗い清める方法として、湯灌がありますが、近年はこの清拭を湯灌がわりにすることが多くなっており、通常の葬儀プランには湯灌が含まれていないことがほとんどです。もし、湯灌を希望する場合は、あらかじめ葬儀社に申し出ておきましょう。
3. 死化粧を施す
故人様が元気だった姿に近づけるためにメイクを施すことを死化粧といいます。具体的には、必要に応じてお顔を剃り、ファンデーションやコンシーラー、口紅、チークなどを用いて血色を整えます。メイクなので男性は関係ないと思うかもしれませんが、男性にも死化粧を施すことがあります。
また、普段使っていたメイク道具を用いることもできるので、もし生前に近いメイクにしてあげたいという希望があれば、葬儀社に相談してみましょう。
ちなみに、死化粧は病院でお亡くなりになった場合のエンゼルケア(死後処置)に含まれている場合もあります。含まれていない場合に、ご遺体の搬送・安置後に葬儀社のスタッフや納棺師が行います。基本的には、追加料金となりますので、費用は葬儀社のスタッフに確認しましょう。
4. 死装束を着る
死装束(しにしょうぞく)は、伝統を重んじる場合は、白装束(しろしょうぞく)を着用します。装束は基本的には葬儀社が用意してくれるケースが多くなっています。死化粧とセットでオプションとなっている場合も多いため、詳細は葬儀社に確認しましょう。
ただし最近は、故人様が生前よく着ていた思い入れのある服を着せてあげることも多くなっています。死後硬直が進むと、後から服を着替えさせてあげることが難しくなるため、着せたい服がある場合は、あらかじめ葬儀社に伝えておきましょう。 ただし、殺生をイメージさせるレザーや毛皮の服、燃やしたあとに残ってしまうような装飾品がついているものは避けるようにしましょう。
また最近は、終活の一環として、死後硬直後でも着用しやすいエンディングドレスを作っておくという方も増えています。
5. 副葬品を入れる
故人様の身支度を終えたら、ご遺体を棺に移します。このタイミングで、もし故人様が愛用していた思い出の品があれば副葬品として一緒に棺に納めます。
納棺のマナー
ここでは納棺に立ち会う際の服装マナーや、棺の中に入れる副葬品のマナーなど、納棺時に気を付けることをお伝えします。
納棺時の服装マナー
納棺時の服装マナーは、以下の通りです。
ご自宅で行う場合
ご自宅で納棺を行う場合の服装は、平服でも良いとされています。ただしここでいう平服とは普段着のことではなく、略喪服に相当する服装です。普段着で納棺に立ち会うことはマナー違反となりますので注意しましょう。
男性
黒もしくは紺、ダークグレーなどのスーツ
女性
同じくダーク系のスーツやワンピース、アンサンブルなど
葬儀場で行う場合
納棺はお通夜前に行うため、葬儀場で行うことが多くなっています。葬儀場で行う場合は、準喪服を着用しましょう。準喪服とは、一般的に「喪服」といわれている服装になります。
男性
白いシャツに黒のスーツ
※光沢のないもの
黒い靴
※光沢のないもの
※内羽根式のストレートチップやプレーントゥ
黒いネクタイやベルト、黒い靴下
女性
黒のスーツ、ワンピース、アンサンブルなど
※光沢のないもの
黒いパンプス
※光沢のないもの
※プレーントゥ(ラウンドトゥ)やアーモンドトゥ
※ヒールの高さは3〜5cmが最適
黒いストッキング
※30デニールまでの透け感のあるもの
黒い布製のバック
※皮製は避ける
副葬品のマナー
納棺の儀式の最後に、故人様が生前愛用していた品物(副葬品)を一緒に棺に納めることができますが、副葬品には相応しくないものもあります。副葬品として棺に納めたいものがある場合、入れてよいものかどうかは、事前に葬儀社に相談しておくと安心です。一例として、棺に入れてはいけないものには、以下のようなものがあります。
燃やすのに時間がかかるもの
分厚い本・フルーツ丸ごとなど
燃やすと有害物質を発生させるもの
ビニール製・プラスチック製のものなど
燃やすと爆発の恐れがあるもの
スプレー缶・ライターなど
燃え残ってしまう可能性があるもの
ガラス製のもの、金属製のものなど
キリスト教や神道の納棺とは
ここまでは、主に仏教における納棺の儀式についてお伝えしてきましたが、キリスト教や神道に基づく葬儀でも、納棺の儀式が行われます。ここでは簡単にキリスト教や神道における納棺の儀式を確認しておきたいと思います。
牧師や神父が立ち合いのもと、カトリックではご遺体に聖水をふりかけて清めたのちに棺に納めます。プロテスタントでは遺族の手で棺に納めたのちに白い布がかけられます。その後、ご遺体の周りを白い花で埋め尽くし、棺の蓋を閉めたらその上から黒い布をかけます。カトリックは棺の上に十字架をおき、プロテスタントは棺の上に白い花で作った十字架を飾ります。
神道では神衣という死装束を着せ、白い布を引いた棺にご遺体を納めます。蓋をしたら白い布で覆って、紙垂を下げたしめ縄を巻きます。
このように宗教によっても、納棺の儀式はさまざまです。
いざというときのために、納棺の流れやマナーを知っておこう
納棺は、ご家族や親族といった近親者のみが立ち会うことのできる儀式のため、葬儀や告別式と違って、参列する機会は比較的少ない儀式になります。そのため実際に行われている儀式の内容を知らない人も多いと思います。
そのため、まずは何が行われているのかを知り、費用や副葬品などについて事前に葬儀社への確認が必要なことは、早めに連絡しておくと安心です。いざというときのために、納棺の流れやマナーを知って備えておきましょう。
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