葬儀や告別式が終わった後、香典をいただいた方に感謝の気持ちを込めてお返しをする『香典返し』は、故人様を見送る儀式の重要な一部です。しかし、香典返しには地域や宗派ごとに異なるマナーがあり、何を返すべきか、いつ送るべきか迷うことも少なくありません。この記事では、香典返しの基本マナーや適切な品物の選び方、地域別の慣習の違いなどについて解説します。
目次
香典返しとは
香典返しとは、葬儀・告別式で故人様に対していただいた「お香典」(宗派によっては玉串料、お花料、お供えと呼ぶともあります。)への返礼品のことをいいます。現代では葬儀などで香典をいただいた場合、「香典返し」を送ることが通例となっています。また、香典返しには忌明け法要が終わったことをお知らせし、感謝の意を伝えるといった意味合いもあります。
「香典返し」は地域性がとても強い慣習でもあります。お香典をいただいた方に失礼のないよう、事前にマナーを理解しておきましょう。もし地域の慣習で迷うことがあれば、葬儀会社や親族の高齢者などにたずねてみてもよいでしょう。
香典返しのタイミング
香典返しを贈るタイミングには、大きく2つの考え方があります。
- 「当日返し」:葬儀等の当日にその場でお返しする方式
- 「後返し」:葬儀などの後日に香典返しを贈る方式
近年では「当日返し」でお返しすることも多くなっていますが、どちらの方法が採られるかは地域やご家族様の考え方によって異なるため事前に確認して決めておきましょう。ちなみに北海道や関東、中部地方では「当日返し」、関西以西では「後返し」が好まれる傾向にあるようです。
「当日返し」の場合
葬儀当日に香典返しをお渡しする「当日返し」の場合、あらかじめ相場から計算した金額のお品物を用意して当日にお渡しします。しかし中には高額を包んでくださる方もいらっしゃるため、いただいた金額に用意したお品物が見合わなかった場合には、後日改めて追加のお品物をお送りします。このように、当日返しは郵送での手配が少なく済むため「後返し」に比べて郵送費を抑えられる傾向にあります。
ただし、香典を誰からいただいたかによっても対応は異なります。
たとえば親族など親しい人から高額な香典をいただいた場合、「葬儀の足しにして欲しい」との気持ちが込められていることも考えられます。この場合、半返しにこだわらずに1/4~1/3にとどめておき、好意に甘えさせていただくのも礼儀かもしれません。いずれにせよ、香典返しの品物の金額相場は親族との関係性や地域性にもよりますので、迷ったらご家族で相談してみましょう。
葬儀後に送る「後返し」の場合
「後返し」の場合、遺族が喪に服す期間の終わりである「忌明け」の法要後2週間以内に贈るのが一般的です。忌明けとは仏式では故人様がお亡くなりになられてから四十九日目にあたります。なお、四十九日法要の際にいただいた「御仏前」への返礼と香典返しを混同しないように注意しましょう。
また後返しの場合、忌明け法要を無事執り行ったご報告といった意味合いも兼ねていますので、法要の前に贈るのは避けるようにしましょう。
仏教以外の香典返しのタイミング
「後返し」の場合、神道では50日目のタイミングでお送りします。またキリスト教では1か月後の昇天記念日に記念品を贈ることもあるようです。本来キリスト教には香典返しの慣習はないのですが、日本の風習に合わせて故人様がお亡くなりになられてから30日〜50日の間に贈ることが多いようです。
香典返しの相場と計算方法
香典返しを選ぶにあたって、いただいた香典の金額によって品物を分ける方法と、一律で同じ品物を贈る方法があります。「当日返し」では、葬儀当日に品物を用意しておく必要があるため、必然的に一律で同じものを贈ることになります。
「香典返し」の相場は5千円、1万円、2万円のよい金額で段階を決めて、そのなかでいただいた額の1/3から半額程度の品物を選ぶことが一般的です。「当日返し」では2000~3000円程度のものが選ばれること多いようです。
またお返しする品物の金額は、近年では、いただいた金額の半額をお返しする「半返し」が一般的になりつつあります。
ちなみに北関東の一部などでは香典返しは3000円以下などが相場とされる地域があり、北海道では1,000円〜1,500円程度の比較的安価なものが贈られる傾向にあります。このように香典返しの相場は、地域によっても慣習の違いがあるようです。
香典返しに適した品物の選び方
ここでは香典返しの品物の選び方のポイントや、避けるべきとされているものを紹介します。
まず、基本的な考え方として不祝儀を後に引かないという意味も込めて、「消えもの」と呼ばれる後に残らないものを選びます。 具体的には、お茶や海苔、お菓子などの食べ物やタオルなどの日用品が選ばれることが多いです。
「消えもの」以外では、陶器や漆器、生活金物などもよいでしょう。また、品物を相手に選んでいただくカタログギフトでの返礼は、失礼な品物を選んでしまうリスクも避けることができるため、近年では広く選ばれるようになっています。
香典返しの品物でタブーはある?
後に残らない物であっても、魚や肉は「生臭もの」と呼ばれタブーとされています。同様にそれらの意匠をあしらった菓子なども避けた方がよいでしょう。また、慶事に使われる紅茶や鰹節、鶴亀のモチーフも避けるべきです。ひょうたんやうさぎ、龍など、長寿や子孫の繁栄を表象する事物も相手に不快感を与えてしまうことがあるため選ばない方が賢明です。
もし商品券を送る場合は、4や9などの忌み数は避けるのがマナーとされています。
掛け紙(熨斗、のし)のマナー
香典返しの品物は掛け紙に包んでお渡しします。掛け紙も含めて熨斗(のし)ということもありますが、本来熨斗は慶事の贈り物に使う飾りですので、正しくは「掛け紙」を使います。
掛け紙には水引きを結びます。水引きとは祝儀袋や不祝儀袋につける飾り紐のことです。香典返しは不祝儀ですので、一般的には「白黒の結び切り」の水引きを用いるのがマナーとされています。ただし西日本や北陸では黒と黄色の水引きを用いることもあります。また、水引きが柄として印刷された掛け紙も広く使われています。ちなみに掛け紙には蓮の柄の入ったものもありますが、仏式向けに限られますので仏教以外で使用するのは避けましょう。
表書きの書き方
掛け紙に記す内容ですが、水引きを挟んで掛け紙の上側には表書きとして贈り物の目的を、下側には贈り主の名前を書きます。水引きに文字が重ならないように注意してください。表書きや贈り主の名前は、忌明けに贈る場合は黒い墨で毛筆などによって記します。ただし当日返しの場合は、薄い墨を用います。 薄墨を用いるのは、「故人様を失った悲しみで文字がにじんでしまった」「突然のことで墨をする余裕がなかった」という意味を表しています。そのため忌明け後(四十九日法要後)に香典返しを贈る場合は、通常の濃い墨で問題ないということになります。
香典返しの場合、一般的に表書きには「志」と書きます。地域や宗旨宗派によって「満中陰志」、「粗供養」や「偲び草」、「茶の子」、「◯回忌」、「忌明志」など書く場合もあります。
掛け紙のかけ方
包装の方法には品物に直接掛け紙をかける内掛けと、包装の外からかける外掛けがあり、香典返しではより控えめで、配送中の掛け紙の汚れや破損も防ぐことのできる「内掛け」が好まれます。
事前にマナーを知って失礼のない香典返しを贈りましょう
香典返しには、葬儀告別式の当日に渡す「当日返し」と後日に贈る「後返し」の二つのパターンがあります。「後返し」の場合、四十九日の法要明けに法要の報告も兼ねて渡します。 選ぶ品物の相場は「半返し」が基本とされますが、地域や相手との関係性によって異なるため、家族と相談して決めましょう。
また、一律で同じものを返す方法と、いただいた香典の金額によって品物を変える方法があります。選ぶ品物については後に残らない「消えもの」が好まれ、避けるべきモチーフなどのタブーがあるので注意しましょう。
地域性や相手との関係性に大きく左右される慣習ですので、不安であれば葬儀会社に相談してもよいでしょう。
香典返しでよくある質問
香典を包む際は、お札の向きに注意しましょう。すべてのお札の向きをそろえて、肖像画がある方を下に向けて中袋に入れるのがマナーです。これには、人物の顔を伏せることで弔意を示す意味があります。また、中袋は糊付けせずに外袋に入れましょう。
Q.贈る品物の金額の目安は?
「当日返し」の場合は葬儀の当日に、 2,000~3,000円程度の品物を、高額な香典に対しては後日個別で対応しましょう。「後返し」の場合にはいただいた香典額の半分〜1/3が相場とされています。
地域や相手との関係性によっても異なりますので、ご家族で相談しておくと安心です。また、葬儀会社に相談してみるのもよいでしょう。
Q.お香典返しはどんなものを選ぶのがよいでしょうか?
「消えもの」と呼ばれる、後に残らないものが好まれます。
また、鶴亀など慶事で使われるモチーフや、ひょうたんなど長寿を連想させるモチーフはタブーとされています。
Q.お香典返しに商品券を送るのは失礼ではないですか?
商品券でもダメではありませんが、金額が相手にわかってしまうため人によっては不快に思われる可能性があります。特に目上の人には商品券は避けた方が無難でしょう。近年では金額が書かれておらず、相手が好きなものを選べるカタログギフトも人気があります。
Q.香典返しは何日前までに注文するべき?
「後返し」の場合、余裕をもって1週間〜10日前に注文しておくと安心です。
Q.御霊前とご仏前の違いは?
葬儀から四十九日法要までが「御霊前」、四十九日法要後は「御仏前」とします。ただし浄土真宗では故人様はお亡くなりになった時点で仏様になられるという考え方のため、葬儀の香典も「御仏前」とするのが一般的です。
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